焼け残ったピアノ

スタッフ通信

最近ピアノの練習を再開しました。
と言っても騒音レベルの下手さなのでマンションの近所迷惑になると思い、練習はテレワークの日の退勤後、17時~18時の1時間以内と決めています。
これまでも何度か思い立って練習再開したものの長続きしなかったんですが、今のところ続いています。

さてそのピアノですが、実家の2階でほこりを被って放っておかれていた15年ほど前、火災で危うく消失しかけたことがあるのです。
実家は隣家からのもらい火で3時間くらい焼け続け、2階はほぼ全焼してしまいました。
翌日、現場に行って実家の惨状を見た時はとても悲しかったんですが、
驚いたのは、焼け落ちた洋服ダンスの中で父の白いワイシャツが1枚だけ焼け残りヒラヒラ風に揺れていた事と、部屋の隅に置いてあったはずのこのピアノが部屋の中心に動いていて、きちんとそこに立っていたことです!

ピアノには押し入れに入っていたはずの毛布が掛けられていました。
おそらく消防士さんの優しい気遣いだったと思います。
(一番先に焼けてしまいそうなワイシャツが1枚だけ残っていたのはコワすぎて、いまだに思い出すとゾワゾワします。)

ピアノは焼け残りはしたものの、煤だらけでキナ臭い匂いがきつく、私以外の家族全員「処分する!」で意見が一致していましたが、私は(弾かずに放っておいたくせに)どうしても手放す気になれませんでした。

家にピアノが届いた日の嬉しさ
分不相応に高価なピアノを買ってくれた親への感謝の気持ち
ピアノを弾いていた頃のいろいろな思い出
ずっと弾かなかったことへの後悔
そして、毛布をかけてくれた消防士さんの思い

古くからお世話になっている調律師さんにダメモトで電話すると「なんとかなるかも」との返事!
こうして「ダメだったら捨てる」という条件で家族を説得し、修理に出すことにしました。

数か月後、修理から戻ってきたピアノは、私のマンションに運ばれてきました。
煤だらけだったピアノはきちんと調律され、ところどころ傷はあるもののキレイに磨かれピカピカです。

でもやはり匂いが・・・・調律師さんもいろいろと頑張ってくれたんですが、どうしても取れないのです。
匂いはその後何年も取れず、部屋を閉め切って弾こうとすると頭が痛くなりました。
その後引っ越しを機に消臭機能がある壁材を貼ったあたりから少しづつ匂いは消えていき、ようやく弾けるような状態になった次第です。

先日久しぶりにこの時の調律師さんに調律をお願いしました。
全てのカバーを外してピアノの中を見せてもらうと、本来白いはずのハンマー(ピアノの弦を叩く部分)は焦げて茶色く変色していて、他の部品もやはり水に浸かったことで
回復できないダメージが残っていました。

最後に調律師さんは試弾しながら、
「ダメージを受けているからピカピカの音は出せないけど、このピアノはとても柔らかい音がするね」と言ってくれました。

ピアノは弾いてあげると音はどんどん良くなっていくそうです。
傷ついても生きていてくれたピアノ。
たくさん弾いてあげようと思います。

(ペンネーム/エリーゼのために)